当院が開院して1年が経ちました。この間、多くの方にご来院いただき、さまざまなお悩みについてご相談をいただいています。
その中でも特に多いのが 「睡眠」に関するお悩み です。
- 寝つきが悪い
- 夜中に何度も目が覚める
- もう少し寝ていたいのに朝早く目が覚めてしまう
- 朝起きても寝た気がしない
このようなお悩みを抱えている方は少なくありません。
そこで今回から数回にわたり、「眠れない(不眠)」 についてお話ししていきたいと思います。
第1回は、「不眠で病院を受診する前に見直してほしいこと」 がテーマです。
日本人は世界的に見ても睡眠時間が短い

上の表は、厚生労働省が2023年に発表したOECD加盟国間の睡眠時間の国際比較です。
世界平均(約8時間30分)と比較すると、日本人は男女ともに睡眠時間が非常に短いことがわかります。
もはや「不眠症」は国民病と言っても過言ではないかもしれません。
不眠対策というと、多くの方が真っ先に思い浮かべるのは 「睡眠薬」 ではないでしょうか。
しかし実際には、お薬を使わなくても
- 生活習慣を見直す
- 睡眠環境を整える
- 日々の行動を少し工夫する
ことで、不眠が改善するケースも少なくありません。
多くの人が勘違いしている「早寝早起き」
診察で患者さんのお話を伺っていると、多くの方が共通してやっている大きな勘違いがあります。
それは、
「早寝早起き」をしようとしていること
です。
驚かれるかもしれません。
なぜなら、私たちは子どもの頃から
「早寝早起きをしましょう」
と、何度も教えられてきたからです。
もちろん「早く寝て早く起きる」こと自体が悪いわけではありません。
特に、大人よりも多くの睡眠時間を必要とする子どもにとっては大切な習慣です。
しかし「早寝早起き」という言葉には、
「早く寝て、その結果として早く起きる」
というニュアンスが含まれています。
ここに問題があるのです。
人は「寝たい時間」に眠れるわけではない
少し考えてみてください。
今夜、
「いつもより2時間早く寝てください」
と言われて、すぐ眠れるでしょうか?
おそらく難しいと思います。
なぜなら、人間の脳には 「体内時計」 があるからです。
睡眠をコントロールする「体内時計」の仕組み

光が目(網膜)に入ると、その情報は神経を通じて脳の 「視交叉上核」 に伝わります。
さらに 「松果体」 に伝達されることで、睡眠に関係するホルモンである メラトニン の分泌が調整されます。
メラトニンには眠気を促す働きがありますが、光を浴びるとその合成が一旦ストップします。
その後、個人差はありますが、光を浴びてから約14~16時間後になると再びメラトニンの分泌が始まり、私たちの覚醒力を低下させ、自然な眠気を生じさせます。
これが「体内時計」の代表的な働きです。
睡眠で本当に大切なのは「起きる時間」
この仕組みからわかることがあります。
それは、
私たちの体は、光を浴びてから14~16時間後に眠くなるようにできている
ということです。
つまり、睡眠にとって本当に大切なのは、
- 何時に寝るか
- 何時間ベッドに入るか
ではなく、
何時に起きるか
何時に光を浴びるか
なのです。
言い換えれば、
「早寝早起き」ではなく
「早起き早寝」
が正しい睡眠習慣だと言えるでしょう。
寝る前のスマホが不眠を悪化させる理由
この体内時計の仕組みを知ると、
- 寝る直前までテレビを見る
- ベッドの中でスマートフォンを見る
- 就寝前にパソコン作業をする
といった習慣が、なぜ睡眠に悪影響を及ぼすのかも理解できます。
テレビやパソコン、スマートフォンの画面からは光が発せられています。
特に 「ブルーライト」 と呼ばれる青色光はエネルギーが強く、体内時計に大きな影響を与えます。
ブルーライトを浴びることで、メラトニンの分泌が抑制され、
- 寝つきが悪くなる
- 夜中に目が覚める
- 睡眠が浅くなる
といった症状につながるのです。
今日からできる不眠対策
眠れなくてお困りの方は、まず次のことを意識してみてください。
✓ 毎朝できるだけ同じ時間に起きる
✓ 起床後すぐにカーテンを開けて朝日を浴びる
✓ 就寝2時間前からスマホやパソコンを控える
✓ 少なくとも就寝1時間前には画面を見るのをやめる
睡眠改善の第一歩は、「早く寝よう」と頑張ることではありません。
まずは 起きる時間を整え、朝の光を浴びること から始めてみましょう。
まとめ
不眠で悩んでいる方の多くは、「もっと早く寝なければ」と考えがちです。
しかし、睡眠をコントロールしているのは体内時計です。
大切なのは寝る時間ではなく、
- 起きる時間を一定にすること
- 朝の光をしっかり浴びること
- 夜のブルーライトを避けること
です。
まずは生活習慣を見直してみましょう。

