前回のコラムでは、「体内時計」についてお話ししました。
当院に通院中の患者さんだけでなく、新たにご来院いただいた方にもお読みいただき、ありがとうございます。
今回は本題に入る前に、患者さんとお話しする中で気づいたことを、いくつかお伝えしたいと思います。
朝は目が覚めたらすぐに光を浴びましょう
前回のコラムでもお話しした通り、私たちの脳は光を浴びることで 「起きた」 と認識します。
そのため、目が覚めた後も寝床でゴロゴロしていると、いつまでもすっきり起きることができません。
朝起きたら、
- すぐに寝床から出る
- カーテンを開ける
- 部屋の電気をつける
など、できるだけ早く光を浴びるように心掛けましょう。
これを続けることで、日を追うごとに朝の目覚めが良くなっていきます。
最近では、カーテンに取り付けるだけで、時間になると自動でカーテンを開けてくれるグッズもあります。
目覚まし時計が鳴っても 「あと5分だけ…」 と寝床でゴロゴロしてしまう方は、ぜひ試してみてください。
在宅勤務の方は「日光不足」に注意
コロナ禍以降、在宅勤務という新しい働き方が浸透しました。
便利な反面、ずっと自宅内にいて、一日中ほとんど日光を浴びない方もいらっしゃるかと思います。
不眠で受診される患者さんの中にも、このような生活をされている方が意外と多くいらっしゃいます。
そのような方は、体内時計がずれてしまっている可能性 があります。
そのため、1日15〜30分ほど、午前中に日光浴をされることをおすすめします。
屋外に出る方が望ましいですが、難しい場合は、日当たりの良い窓際で過ごすだけでも構いません。
今回も「不眠で病院を受診する前に見直してほしいこと」がテーマです
今回も前回に引き続き、「不眠で病院を受診する前に見直してほしいこと」 がテーマです。
前回は脳内の体内時計についてお話ししました。
実は体内時計は、脳だけでなく、ほとんどの臓器にも備わっています。
脳内の体内時計は 「中枢時計」 と呼ばれます。
一方で、脳以外の臓器にある体内時計は 「末梢時計」 と呼ばれます。
中枢時計はいわば 「司令塔」 のような存在です。
朝に光を浴びて中枢時計がリセットされると、その信号が末梢時計に伝わります。
すると、各臓器の体内時計もリセットされ、それぞれの働きを始める準備が整っていきます。
食事も体内時計を整える大切なポイント
末梢時計は、中枢時計からの指令だけでなく、食事 によってもリセットされることがわかっています。
そのため、体内時計を適切に保つためには、できるだけ同じ時間に食事を摂ることが効果的です。
特に朝食は、夕食から続いている 「断食状態」 の体に栄養を補給する、大切な食事です。
朝食は
- 糖質(炭水化物)
- タンパク質
- ビタミンB群
を中心に、バランスよく摂ることをおすすめします。
目安としては、起床後1時間以内に朝食を摂るよう心掛けましょう。
また、夕食から朝食までの 「絶食時間」 を10時間ほど設けることができれば、体内時計のリセット効果が高まると言われています。
そのため、夕食はなるべく早めに摂ることもおすすめです。
コーヒーだけではない「カフェイン」
「カフェインを摂ると眠れなくなる」ということは、多くの方がご存じだと思います。
しかし患者さんのお話を聞いていると、「コーヒーだけ気を付けている」という方が非常に多い印象です。
実はカフェインは、コーヒー以外にもさまざまな飲み物や食べ物に含まれています。

就寝4時間前からはカフェインを控えましょう
カフェインは摂取してから15〜30分ほどで効き始めます。
そして、血液中の濃度が半分になるまで(これを「半減期」といいます)には、平均で4〜5時間かかるとされています。ですから、
就寝の4時間前以降はカフェインを控える
ことをおすすめします。
私自身も、21時以降にうっかりコーヒーを飲んでしまうと眠れなくなることがあります。
若い頃は寝る直前に飲んでも平気だったのですが……(笑)。
心当たりのある方は、一度カフェインを控えてみてはいかがでしょうか。
なお、抹茶やチョコレートを使ったお菓子にもカフェインが含まれていることがありますので、ご注意ください。
喫煙も睡眠に影響します
ニコチンにも覚醒作用があります。
ニコチンの半減期は約2時間とされています。
就寝の1〜2時間前からは喫煙を控えましょう
喫煙される方は、できるだけ就寝前の喫煙を避けることをおすすめします。
「寝酒」は睡眠の質を下げます
眠るためにお酒を飲む、いわゆる「寝酒」をされている方も少なくありません。

2005年に報告された国際調査では、日本人は眠れない時、医師へ相談したり睡眠薬を利用したりするよりも、アルコールに頼る傾向が強いという結果が示されました。
少し古いデータではありますが、現在でもこの傾向は大きく変わっていないと考えられます。
たしかにアルコールには寝つきを良くする働きがあります。
しかし、アルコールが肝臓で分解される途中で発生する「アセトアルデヒド」には交感神経を刺激する作用があり、かえって目が覚めやすくなります。
また、アルコールには利尿作用もあるため、夜中にトイレへ行きたくなり、やはり中途覚醒の原因になります。
その結果、睡眠の質はかえって低下してしまうのです。
さらに、寝酒を続けると身体がアルコールに慣れ、同じ量では眠れなくなります。
その結果、飲酒量が増え、肝障害やアルコール依存症などのリスクも高まります。
禁酒すると今度は反動で眠れなくなり、再びお酒に頼るという悪循環に陥ってしまう方も少なくありません。
まずは生活習慣を見直してみましょう
現在広く使われている睡眠薬については、第3回で詳しくお話しします。
最近では、従来のものに比べて依存性の少ない睡眠薬も多く登場しています。
専門の医師の指示に従って適切に使用すれば、睡眠薬はアルコールよりもはるかに安全です。
不眠でお困りの方は、第1回と今回のコラムを参考に、まずは生活習慣を見直してみてください。
それでも改善しない場合は、一人で悩まず、医療機関へご相談いただくことをおすすめします。
まとめ
不眠の改善には、睡眠薬だけでなく、日々の生活習慣を整えることが大切です。
まずは次のポイントを意識してみましょう。
- 朝は起きたらすぐに光を浴びる
- 午前中に15〜30分ほど日光を浴びる
- 毎日できるだけ同じ時間に食事をする
- 朝食をしっかり食べる
- 就寝4時間前からカフェインを控える
- 就寝前の喫煙を控える
- 寝酒に頼らない
これらを実践しても改善しない場合は、我慢せず医療機関へご相談ください。
次回は、「睡眠薬について」詳しくお話ししたいと思います。

